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【連載】ひとつだけ 藤原ちから編(2016/8)― ままごと『港の劇場』2016

ひとつだけ

2016.08.4


あまたある作品の中から「この1ヶ月に観るべき・観たい作品を“ひとつだけ”選ぶなら」
…徳永京子と藤原ちからは何を選ぶ?
   
2016年8月 藤原ちからの“ひとつだけ” ままごと『港の劇場』2016
2016/8/12[金]~8/28[日] 小豆島・坂手地区

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photo : Hideaki Hamada


小豆島を初めて訪れたのは2013年10月、この時はわずか2泊3日の短い滞在だった。「これ以上滞在すると情が移りすぎる」と当時の日記に書きつけたが、すでに手遅れだったようで、それから毎年、小豆島を訪れるようになった。

最初は、「劇団ままごとの次なる活動を目撃したい」という批評家・ジャーナリストとしての使命感(および、勘のようなもの)がわたしを島に連れていったのだと思う。彼らは坂手港を拠点として、おさんぽ演劇『赤い灯台、赤い初恋』をはじめとする様々な演目をつくりだしていったし、3年目の2015年には、小豆島高校の体育館でついに『わが星』の上演にこぎつけた。『わが星』で初めて現代演劇に触れた、という島の人も多かったことだろう。それはままごとの小豆島滞在における、ひとつの達成であった。

そうした作品群もさることながら、わたしは彼らの島での過ごし方にも惹かれていった。エリエス荘という滞在施設での食事やパーティ、朝の坂手港での体操や、流しそうめんも含めて。きっとそうした活動をひっくるめたものが、この「港の劇場」なのだ。

そうこうするうち、わたしの当初の使命感もだいぶ溶けてしまった(消えたわけではないけれど)。たぶん、旅をしたいから、今年も小豆島に行くんだと思う。



4年目となる今年、彼らは喫茶店を営んでいる。8月12日~28日のコア期間にはパフォーマンスも注文できるらしいが、この「喫茶ままごと」それ自体は今もふつうに営業されている(月曜定休。カレーが美味しいそうです)。喫茶で働いている 落雅季子の日記 によれば、どうやら毎日いろんな人々が訪れ、何かしらの物語が生まれているようだ。この喫茶店は、島と外界との繋ぎ目のようなものかもしれない。そして日記は、島の日常にフィクションを混入させていく。

この夏の目玉は、ままごと×スイッチ総研の『小豆島きもだめスイッチ』。ちょっとしたスイッチを作動させると、突然俳優たちが現れてパフォーマンスする、というアレである。今回は40分ほどのツアー型スイッチ。小豆島の暗い夜に、参加者たちの絶叫がこだますることになるだろう。

島の人たちもパフォーマーとして参加する。すでにやる気満々で、手ぐすねひいて待ち構えているらしい……。



小豆島へはいくつかの航路がある(坂手港には、神戸からジャンボフェリーがある。船内では名物のうどんを食べよう!)。瀬戸内海の島々を回って、瀬戸内国際芸術祭 の作品群を楽しみながら、小豆島に立ち寄るのもいい。あるいは、あまりがんばって回遊せずに、島でのんびり時間を過ごすのもいいかもしれない(わたしはいつものんびり派です)。

なお、8月10日~12日の3日間は、同じ小豆島の大部の造船所跡で、江本純子と佐久間麻由による自主企画『大部のできごと』も上演される。ウェブサイトに掲載されている コンセプト には、とても共鳴するものを感じる。なぜ、彼女たちはこの場所にたどり着いたんだろう?


≫ままごと×スイッチ総研『小豆島きもだめスイッチ』 公演情報はコチラ

ままごと

2009年に、劇作家・演出家の柴幸男によって旗揚げされた、柴幸男の作品を上演する団体です。近年は小豆島や公園など公共空間で、“その時、その場所で、その人たちとしかできない演劇”を模索しています。 演劇を「ままごと」のようにより身近に。より豊かに。 ★公式サイトはこちら★